最近、企業のマーケティングにおいて
SNSやブログがにわかに注目されるようになり、
「バズ・マーケティング」という言葉も頻繁に使われるようになった。
バズ・マーケティングとは、簡単にいうと口コミ、マーケティングである。
商品やサービスを実際に使ってみたユーザーが、
他人に伝えることによって自然と広がっていき
スパイラルが生まれる。
FacebookやTwitterといったソーシャルメディアの特性上、
バズ・マーケティングが非常に適していると注目を集めている。
バズ・マーケティングを語る上で、
江戸時代に大変興味深い、
面白い逸話が残っているので紹介する。
谷文晁(たに ぶんちょう 1763年10月15日-1841年1月6日 ) は
江戸時代後期の画家であり、
円山応挙、狩野探幽とならぶ大成者の一人である。
そんな文晁だが、世に名前が知られていない時、
如何に自分の技量を世に知らしめすか思案していたところ、
あるとんでもないアイデアが浮かび上った。
文晁は、ある大晦日の夜、数百本の扇子に素晴らしい富士の絵を描き、
自分の落款 ( らっかん ) をしっかり入れて、江戸の町に出て行った。
そして、その扇子をおもむろに町中にばら撒いて帰ってきたという。
年が明けて、町人が外に出ると、無数の扇子が落ちているではないか。
それを拾い開けてみると、それはそれは素晴らしい富士の絵が描かれている。
「こいつは春から縁起がいいや」
と、たちまち江戸中の話題となり、落款から文晁の作品と分かると、
人々が挙って文晁宅に駆け寄り注文が殺到したという。
これは、文晁が考え出したバズ・マーケティングそのものである。
文晁は既に優れた技能を身に付けていたが、
画業としては、知名度が低く今一つというところだった。
一歩間違えれば、ただの迷惑となりうるこの方法が
一夜にして名を轟かすほどになったのも
以下の要因が考えられる。
「世間のニーズを的確にとらえ、的確なタイミングで
突飛な方法をとった。」
それは、元旦の初夢で縁起が良いとされる「一富士二鷹三茄子」の
富士の絵が描かれていた事。
人々にとってはこの時期、大変縁起が良い物となる為、
ニーズを捉えていたとなる。
そしてタイミングは大晦日の夜から元旦に掛けて行うことで
富士の絵が活かされる。
(時期外れでは、効果が薄まるどころか迷惑行為に繋がる危険性もある)
その取った方法が、町中にばら撒くといった行動が、
誰もが驚く突飛な行動であるため、
人々の気を引き付ける事が出来た。
これらの要因が作用して文晁は後に
一流画家の道を歩む事になったのだ。
文晁はこれらの成果を目算し、念入りに計画を立てて着々と準備を
進めていたというから驚きである。
現代のバズ・マーケティングにも、文晁の事例を置き換えることで
何かヒントになるのではないだろうか。